ドックベストセメントは、アメリカで開発されました。

ドックベストセメントの名称は、治療の原理を19世紀に発見したアメリカ、フィラデルフィアの歯科医師、Dr.John Henry Holiday(通称ドックホリデー)の名前が由来です。ドックホリデーは治療した患者さんの中に、子どもの時にむし歯治療をした歯が102歳になっても新たなむし歯もないまま、再発せず、健康に保たれている女性がいることに着目しました。その治療に使われていたのが銅の含有されたセメントだったのです。

そこで、これを改良してレッドカッパーセメント(赤銅セメント)という、むし歯の予防と歯の神経組織の新陳代謝を復活させるセメントを開発しました。
ところがセメントを開発中、殺菌力を増加させるために銅の成分を増やしたところ、使用した歯の神経が腐ってしまうという事態が起きました。その結果、徐々にレッドカッパーセメントは使われなくなったのです。

その後、歯科の世界では「むし歯は削って治す」という潮流となり、この銅セメントの存在はほとんど忘れられていたのです。これが1990年代に入り、アメリカの歯科医師 Dr.Tim Fraserによって再注目されました。そして研究が始まり、安全無害で殺菌力に優れた現在のドックベストセメントが完成したのです。

ちなみに歯科で使うセメントは詰め物などの修復物を入れる時に使われる接着剤なども含まれ、現在の歯科治療にはなくてはならないものとして、普及しています。

ドックベストセメントは、殺菌作用のある銅イオンと、鉄イオンが配合され、さらに複数のミネラルが含まれている歯科用のセメントで、このセメントを虫歯部分に塗る事で、従来の虫歯治療のように、虫歯部分を削ることなく、殺菌して虫歯を治す事が可能です。

むし歯の部分に、ドックベストセメントを塗ると、虫歯を削ることなく、金属イオンの殺菌力により、むし歯菌が死滅します。さらに、ドックベストセメントには、ミネラルの作用により、歯の再石灰化が徐々に促されるという特徴もあります。また、歯に塗られたドックベストセメントからは、金属イオンによる殺菌効果が持続して働き続けるため、一度、ドックベストセメントの治療をすると殺菌力が永続的に続くことも大きなメリットです。このため、ドックベストセメント治療を実施した歯は再度、むし歯になるリスクは低くなるのです。

通常の虫歯治療においては、感染した部分を大きく削り、詰め物や被せ物を入れるためのスペースを確保します。その際に健康な歯質も含めて削らなければならないケースもありました。一方でドックベストセメントなら健康な歯質を多く残せるので、歯の寿命を延ばす効果が期待できます。

「ズキズキ強い痛みがある」「以前は激しい痛みがあったのに今は無い」などのケースにおいては、ドックベストセメントが適用できない可能性があります。無理に治療を行うと、かえって症状が悪化しかねません。ドックベストセメントを成功に導くためには、虫歯の進行度、位置、量などを正確に分析しなければいけません。

ドックベストセメントは永久的な殺菌効果があると言われています。しかし、それは定期的に歯科医院に行かなかったり、日々のメインテナンスをサボったりしても良いことには繋がりません。あくまで虫歯の再発リスクを下げるだけの話であり、治療後も定期的に通院を行わないと、再び虫歯は発生します。

MAKIHIRA

関連記事一覧

カテゴリー